ときめきトゥナイト

女の子の好きな要素しかない漫画

中学にあがるころだったと思う。月刊漫画雑誌が流行っていた。「りぼん」と「なかよし」という有名な漫画雑誌があった。集英社と講談社という、出版社も大手の雑誌で、読み手は、りぼん派、なかよし派にわかれていた。わたしは、姉の影響で、りぼん派。りぼんは、ただの恋愛漫画にプラスして、ファンタジー要素や少し変わった設定の漫画が多かったように思う。ギャグ漫画もあった。一方の、なかよしは、りぼんよりもほんの少しエロ要素があった。大人びた中学生が初体験をするだとか。その「りぼん」で連載されていたのが、「ときめきトゥナイト」だった。魔法、王子様、生まれ変わりなど、女の子にはたまらない要素の多いこれにたちまちハマっていった。

怪物一家の女の子の、一世一代の恋

吸血鬼の父親、狼女の母親、狼男の弟を家族に持ち、自身は父親に似た吸血鬼の蘭世は、同級生の真壁くんが好き。少し不良で、だけど優しい。恋のライバル・神谷曜子という個性の強い女の子と日々争う毎日。そんなある日、ただの恋愛だったはずなのに、真壁くんの身に異変が起きる。蘭世は必死になって真壁くんを守り支える事になる。何度か魔界をめぐる大きな出来事に巻き込まれ振り回されながら、次第に蘭世と真壁くんは信頼と愛情でつながれてゆき、乗り越えていく。

ここが好き

吸血鬼と狼女を両親に…といっても、実際に血を吸うシーンなどはあまり無く、父親に至っては太陽も平気だし十字架に助けられたりもする。知っている吸血鬼とは違う(笑)そんな父親と、狼女の母親が、娘・蘭世の成績についてケンカをするシーンからはじまるのだけど、ごく一般的に、どこの家庭でも有り得そうな出だしだったのが、気軽に読めてよかったのかもしれない。

ここが好き、というポイントは特に決められず、全体的に好きなのだ(笑)

個性的なキャラもいい、世界観も好き。魔法や生まれ変わり、魔界などなど、非現実的で楽しかった。当時、わたし達家族が住んでいた家は父が生まれる前から建っていた家でとても古く、狭く、平屋建てだったから、蘭世たちの住まうお屋敷が羨ましかった。蘭世の部屋はベッドで、縦長の大きな窓もある。地下には魔界への扉があり、大王様の遣いがやってきたり、魔界の異変を感じたりすればここを通るし、人間界にいられなくなった時(鈴世編)は、魔界側からこの扉を閉じたりもした。ご先祖様の眠る扉もあるし、鏡の間、過去への扉など、非日常がたくさんで、飽きなかった。

今この年で読み返してみると、わりとツッコミどころがあるが、少女漫画とは大抵そんなものだろうと思う(笑)

あの人が好き、両想いになりたくて色々頑張る漫画には飽きていたしつまらなかったから、恋愛漫画で怪物要素(ファンタジー)があり、生まれ変わりや魔法、好きな人が王子様、という、女の子の喜ぶ要素が詰まっていたこれにハマったのだ。

連載開始してすぐ、真壁という男の子の人気が高くなった。いまでいえば、ツンデレで背中で語るタイプは思春期の女の子にたまらない(笑)クラスを見回しても、真壁くんのような男子はひとりもおらず、大人びた真壁くんに比べたらコイツ等の幼稚さ…!と、バカにしてたものだ(笑)

そうしてまもなくTVアニメ化が決定した。 その頃、姉が欲しがったレコードオーディオシステム?を親が買ってくれた。古民家風の古い家にコレを持ち込み、重すぎるので畳が沈んでしまうため、板を置いてからステレオを置いた。
これはカセットテープだけでなく、レコードもラジオも聞ける。大きなスピーカーが左右にあり、音がとても良かったのを覚えている。レコードプレーヤー、音質?を調整する機械、ラジオチューナー、カセットテープレコーダープレーヤーでワンセットだった。当時で二十万くらいしたんではないだろうか、今思うといろいろな意味で震える。

レコードなど一枚も持ってなかったわたしに、母が、ときめきトゥナイトのアニメのレコードを買ってきてくれた。漫画を読みつつレコードを聞いて近所の米屋で買ってきたカールを食べる。これが子供の頃のぜいたくだった。

そんな記憶が、ときめきトゥナイトを読むと思い出される。とても懐かしく、幸せな頃。難しいことなど何も書いていないこれは、きっとおばあさんになっても好きだと思う。